第5話「中小管理会社の相続ビジネス入門」

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第5話

 資産承継部を立ち上げ、早4カ月が過ぎようとしている。最近よくある相談の中に「認知症」問題がある。先日、オーナーから『「(1)私が重度の認知症になった場合」と「(2)妻が重度の認知症になった場合」はどんなリスクがあるか教えてほしい』と相談されたので、自分なりに調査してみた。
 「(1)オーナー本人」が重度の認知症になった場合、本人に意思能力がなく法律行為ができない、つまり、契約関係は何もできない状態だ。具体的には、収益物件建築・建替え・売却・金融機関の借換え・生命保険契約・遺言・民事信託契約・ 110万円贈与(暦年贈与)など、何から何までできなくなってしまう。要は塩漬け状態だ。 本人は自分自身が認知症になるなんて考えてもいないし、考えたくないというのが本音だろう。しかし、切実な問題になりかねないという認識 を強く持って、事前にできることをやっておく必要がある。具体的には、元気なうちに節税対策を可能な限りやっておく必要があるが、認知症になってしまった後でも不動産売却や建替えなどができるように民事信託契約の締結が必要 だろう。
 「(2)妻」が重度の認知症になった場合、オーナー本人ではないので、オーナーの財産が塩漬けになるということはない。しかしながら、妻が認知症の状態で、オーナーに相続が発生した場合、妻は遺産分割協議を行う意思能力がないため、後見人を立てる必要が生じる。そうすると、法定相続分である2分の1は相続せざるを得ないため、2分の1は塩漬けになってしまうことになる。これはこれで切実である。遺言を書いておけば、妻の後見人からの遺留分減殺請求4分の1だけが塩漬けになるだけで済むことになるので、妻が認知症の場合にも必ず検討する必要がありそうだ。でも、誰もこんな危機感を持っていないと考えると、自分がしっかりと伝えていかねばと思う石川部長であった。

登場する人物、団体は全て架空です。 (毎月第二週に掲載します。)

認知症になったら本当におしまい・・・

解説

自分が認知症になるなんて誰も思っていない。でも、資産家であればあるほど、認知症になった場合のリスクが大きすぎることを認識しなければならない世の中になってきたと思います。自らの足跡をしっかりと残すためにも、認知症になる前に方向性を決め、権限を次世代に移しておくなどの対策が本当必要だと思います。