第3話「中小管理会社の相続ビジネス入門」

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第3話

 資産承継部を立ち上げ、オーナーから相続の相談を受けるようになってきた石川部長。「基本的なことは自分でも知っている」とたかをくくっていたが、勉強していけばいくほど、相続の奥深さを知り、先日オーナーからの質問に冷や汗をかいてしまったところだ。
 そのオーナーの家族構成は、私、妻、長男、長女の4人でごく一般的。私は自信をもって「オーナーの相続人は3人です!相続分は妻(1/2)・長男(1/4)・長女(1/4)です!」と回答した。誰がどう考えても間違えるはずがない。しかし、オーナーから「妻は病気がちで、自分よりも早くなくなる可能性があって」と一言。言われてみれば確かにそうだ。夫→妻の順番で相続が発生する前提でしか想定してなかったのだ。順番が変わるとさっきの回答も変わる。つまり「相続人は2人で、相続分は長男(1/2)・長女(1/2)」となってしまう。相続発生の順番は選べないのだ。確かに平均寿命は女性のほうが長いが、夫婦は大体、同世代である以上、順番なんて選べない。色々なリスクを考えながら相談に乗る必要があるなと痛感した。
 オーナーからはさらに一言あった。「しかも長男夫婦と長女夫婦の仲が悪くて。二世帯住宅で一緒の住んでいる長男夫婦に財産をほとんど残してあげたい気持ちがあるんだよ。」これが何を意味するのかその時すぐに気付かなかったが、事務所に帰ってよく考えたら、オーナーの心配事が少しだけわかったような気になった。つまり「妻が先に亡くなったら長女に相続分1/2あり、長男にほとんどの財産を渡したいという思いも叶えられなくなってしまう」ということだ。さまざまなリスクを考えなくてはダメだと痛感する。
 今回の相談以外にも「結婚しているが子供がいないケース」「未婚であるが、兄弟姉妹がいるケース」「養子縁組を複数人とするケース」「再婚して連れ子養子があるケース」など、考え出すとキリがない。本で読むだけでは頭に残らないし、使い物にならない。お客様のためには自分自身がレベルアップを図るしか道はない。1つずつ案件をこなしながら、経験を積んでいこうと心に決めた。

登場する人物、団体は全て架空です。(毎月第2週に掲載します。)

亡くなる順番なんて決められない!

解説

お客様の相談は生の声。書籍だけでは対応できないことが多いのが現状です。亡くなる順番だって夫からなんて決められない。当たり前のことですが、順番通りにならなかった場合のリスクをお客様の立場で考える必要もあります。
お客様の目線で相談に乗れることがお客様満足度の向上に繋がることは間違いありません。